相続税・贈与税の改正 ~申告義務者が5割増?~

第102号

社会保障・税一体改革大綱が閣議決定され発表されました。今回の御簾納レポートは、その中の相続税の基礎控除引下げおよび税率構造の見直し、贈与税の税率構造の緩和および相続時精算課税の対象拡大についての改正について説明させて頂きます。

 

相続税・贈与税の改正 ~申告義務者が5割増?~
平成23年度の税制改正は、ねじれ国会や震災の影響等により予定通りに成立しませんでした。その際先送りされた、相続税と贈与税の改正が、今回の社会保障・税一体改革大綱に盛り込まれております。今回は改めてその詳細を開設させて頂きます。

(1)相続税の計算上引くことの出来る基礎控除額が4割縮小
基礎控除額は現行の「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」から「3,000万円+600万円×法定相続人数」
に引き下げられます。改正後は基礎控除額が4割引き下げられるため、申告義務がある人の割合は大幅に増
える見通しです。

現行 改正案
基礎控除額 5,000万円+1,000万円×法定相続人の数 3,000万円+600万円×法定相続人の数

(2)最高税率が50%から55%に引上げ
相続税の最高税率が50%から55%に引き上げられます。また税率区分は現状の6段階から8段階に変更され、6億円超の遺産に最高の55%、2億円超3億円以下には新たな税率区分として税率45%が設けるとされています。

現行 改正案
課税財産(基礎控除後) 税率 控除額 課税財産(基礎控除後) 税率 控除額
1,000万円以下 10% - 同左
10%

3,000万円以下 15% 50万円 同左
15%
50万円
5,000万円以下 20% 200万円 同左
20%
200万円
1億円以下 30% 700万円 同左
30%
700万円
3億円以下 40% 1,700万円 2億円以下 40% 1,700万円
3億円超 50% 4,700万円 3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

(3)死亡保険金の控除制限
現行の法律では相続税の計算上、死亡保険金は「法定相続人×500万円」が非課税となっています。改正後は、控除が認められるのは法定相続人のうち、未成年者・障害者又は相続開始直前に被相続人と生計を一にしていた相続人に限るとされています。よって、亡くなった親から独立した子供などには非課税枠がなくなることになります。

現行 改正案
死亡保険金の非課税枠 500万円×法定相続人の数 500万円×法定相続人の数(未成年者、障害者又は相続開始直前に被相続人と生計を一にしていた者に限る)

(4)未成年者控除・障害者控除の引き上げ
下記の通りの改正案がもりこまれています。
現行 改正案
未成年者控除 20歳までの1年につき6万円 20歳までの1年につき10万円
障害者控除 85歳までの1年につき6万円
(特別障害者については12万円) 85歳までの1年につき10万円
(特別障害者については20万円)

 

(5)相続時精算課税制度の対象者拡大
相続税精算課税の受贈者に、20 歳以上である孫(現行 推定相続人のみ)が追加され、贈与者の年齢要件も
65歳以上から60歳以上に引き下げることが予定されています。

(6)贈与税の税率構造の緩和

現行 改正案
右記以外の贈与 親から子や孫への贈与(子・孫が20歳以上)
課税財産(基礎控除後) 税率 控除額 課税財産(基礎控除後) 税率 控除額 課税財産(基礎控除後) 税率 控除額
200万円以下 10% − 同左
10%
− 同左
10%
300万円以下 15% 10万円 同左

15%
10万円 400万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円 同左
20%
25万円 600万円以下 20% 30万円
600万円以下 30% 65万円 同左
30%
65万円 1,000万円以下 30% 90万円
1,000万円以下 40% 125万円 同左
40%
125万円 1,500万円以下 40% 190万円
1,000万円超 50% 225万円 1,500万円以下 45% 175万円 3,000万円以下 45% 265万円
3,000万円以下 50% 250万円 4,500万円以下 50% 415万円
3,000万円超 55% 400万円 4,500万円超 55% 640万円

(7)施行予定
上記の改正は、相続税・贈与税ともに平成27年1月1日以降の相続または遺贈・贈与より適用するとされています。

このように、上記改正は、申告義務者が大幅に増える内容の改正案となっております。国会の動向を見守りながら、該当する可能性のある方は、相続税がかかるかを試算し、必要があれば相続税対策をご検討ください。

 

 

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