民泊サービスに係る所得税及び消費税の取り扱い

第118号

外国人観光客数が過去最高を更新し続ける中、急速に成長する民泊サービス。
平成28年4月1日の旅館業法施行令改正により、民泊サービスを提供しやすくなりました。
今回は民泊サービスの提供に係る所得税及び消費税の取り扱いについて解説します。

民泊サービスに係る所得税及び消費税の取り扱い

はじめに
宿泊者の数が10人未満の場合の簡易宿所の営業許可要件が、「客室延床面積33㎡以上」から「宿泊者1人当たり面積3.3㎡に宿泊者数を乗じた面積以上」と改正されたことと、フロントの設置が必須ではなくなったことで、より民泊サービスを提供しやすくなりました。今回は個人で民泊事業を始める場合の税務の取り扱いについて解説していきます。

所得税
給与所得がある方が民泊ビジネスを始めた場合、その所得金額が20万円を超えた場合は確定申告をする必要があります。(所得 = 収入 - 必要経費)
所得の種類について、民泊サービスによって得られる収入は、事業所得若しくは雑所得に該当すると考えられます。
事業所得に該当する場合、赤字を他の所得と損益通算することができますが、雑所得の場合は損益通算できないほか、青色申告制度を適用することができませんので、注意が必要です。
事業所得か雑所得かの判断に関しては以下の項目に照らし合わせての総合判断になります。
・営利性の有無
・継続性、反復性の有無
・安定した収入が得られる可能性があるか

消費税
住宅の貸付けは非課税とされておリますが、民泊サービスによって得られる宿泊料は、「住宅の貸付け」には該当せず、課税売上に該当するものと考えられます。
(住宅の貸付期間が1か月未満の場合及び旅館業法2条1項に規定する旅館業に該当する場合は住宅の貸付けには該当しません) 別の事業で課税売上が発生している場合、別の事業の課税売上に民泊サービスの収入を含めて消費税の税額を計算する必要があります。
原則として前々年度の課税売上高が1,000万円を超える方が消費税の申告義務がありますので、申告義務のある方は民泊にかかるものも含めて申告することになります。
【簡易課税制度を適用している場合】
民泊サービスの宿泊料は第5種事業に該当すると考えられますが、宿泊者に食事の提供をする場合、その方法により取り扱いが変わります。宿泊代と夕食代を明確に区分できる場合、夕食代は第4種事業として消費税の計算を行うことが出来ますが、「一泊二食付で2万円」のように食事代込みで宿泊料を定めている場合、その宿泊料の全額が第5種事業の対象となります。

その他
【住宅ローン控除について】
住宅ローン控除の適用を受けている自宅を民泊として活用する際には、民泊によって住宅ローン控除の適用が受けられなくなってしまう可能性があります。
住宅ローン控除の適用要件は、「自己の居住用の家屋を取得し、その適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいること」が要件となっていますので、自宅を民泊として貸出した場合には、この要件を満たさなくなる恐れがあります。

終わりに
今回の旅館業法施行令改正によって民泊ビジネスを始めやすくなり、また旅行者にとっては宿泊料が安く済むことから、ますます普及が予測されます。しかし既存の法規制では想定していない貸出形態のため、法整備が追いつかず様々な問題が生じているようです。
詳しくは弊所担当までお気軽にご相談下さい。

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