小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
第110号
平成25年度税制改正では、相続税の基礎控除が引き下げられ増税感が高まるなか、小規模宅地等の特例の見直しによる相続税の減額が盛り込まれ注目を集めています。今回は小規模宅地等の特例の改正のポイントを解説します。
小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
小規模宅地等の特例とは
相続や遺贈によって取得した土地の中に、被相続人が居住用や事業用として使用していた小規模な宅地等があった場合には、それらの土地が被相続人の生活の基盤になっていたこと等を配慮して、相続税の計算上一定割合を減額するというものです。
この特例の対象となる宅地等とは、次の全ての要件を満たす宅地等とされています。
① 相続開始の直前において、被相続人等(被相続人又は被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族)の事業の用または居住の用に供されていた宅地等であること。
② 一定の建物や構築物の敷地の用に供されていたこと。
③ 棚卸資産又はこれに準ずる宅地等ではないこと。
なお、相続開始前3年以内に贈与により取得した宅地等や相続時精算課税に係る贈与により取得した宅地等については、この特例の適用を受けることはできません。
改正の内容
平成26年1月1日以後の相続に適用されるもの
・二世帯住宅の内部で二世帯の居住空間がつながっていないと特例の適用が出来ませんでしたが、その構造上の要件の撤廃。
・被相続人が老人ホームに入所し、老人ホームの終身利用権を取得した場合でも、空家となっていた家屋の敷地について特例の適用が可能。
(3)特定居住用宅地等の適用対象面積の見直し
特定居住用宅地等の適用対象面積の上限は、現行では240㎡でしたが、改正後は330㎡までに拡大されました。
なお、特定事業用等宅地等の上限は400㎡までとなり変更はありません。
(4)特定事業用等宅地等と特定居住用宅地等を併用する場合の限度面積の拡大
現行においては、特定事業用等宅地等と特定居住用宅地等の両方があって、それらを併用して適用する場合の上限面積は限定的となっています。例えば、特定事業用等宅地等が400㎡あり、特定居住用宅地等が240㎡ある場合の上限面積は400㎡であり、全てについて特例が適用になるわけではありません。
平成27年1月1日以後の相続に適用されるもの
・特定居住用宅地等の適用対象面積の上限が、240㎡から330㎡までに拡大。
・特定事業用等宅地等及び特定居住用宅地等を併用する場合の限度面積の拡大。
解説
(1)二世帯住宅の構造要件の撤廃
現行では、二世帯住宅の内部で二世帯の居住空間がつながっているものでないと特例の適用ができません。
しかし、改正後は構造上完全に区分されているものであっても、区分登記がされていない場合、特例の対象とすることが出来るようになりました。
(2)被相続人が老人ホームに入居した場合
現行では、被相続人が終身利用権を取得して有料老人ホームに入所した場合には、生活の本拠が老人ホームに移動したとして、元々ある自宅の敷地については、特例を適用することができません。
しかし、改正後は下記の要件が満たされる場合に限って老人ホームの終身利用権を取得していたとしても適用できるようになりました。
① 被相続人に介護が必要なため入所したものであること。
② 老人ホームに入居後、当該家屋を貸付け等の用途に供していないこと。
しかし、改正後は特定事業用等宅地等が400㎡まで、特定居住用宅地等が330㎡までのそれぞれの限度面積までが併用できるようになり、最大730㎡まで特例の適用ができることとなりました。
なお、貸付事業用宅地等の場合は現行と同様に調整を行うこととなっています。
終わりに
本制度については、簡潔にまとめております。また相続税対策は如何に早い時期から始めるかが重要となります。本制度を含め、様々な制度・計算方法等がありますので、疑問やご相談等ありましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。