中小企業の個人保証 ~経営者保証に依存しない融資へ~
第115号
中小企業が資金調達をするためには社長個人の保証が必要になることが多いなか、個人保証は積極的な事業展開や事業再生を阻害する要因にもなっています。今回は、こうした問題を解消する為に登場した、「経営者保証ガイドライン」について解説します。
中小企業の個人保証 ~経営者保証に依存しない融資へ~
個人保証とは
通常、中小企業では融資を受ける際に、経営者が連帯保証人となって、銀行から借りた資金の返済を保証することになります。
担保となる不動産などを持たない中小企業が銀行から融資を受けるための手段として定着していますが、経営者にとっては重い負担です。経営が悪化して融資の返済ができないと自宅などが差し押さえられるケースもあり、思い切った事業展開を阻む要因にもなっています。
中小企業庁が実施した実態調査の結果によれば、借り入れのある中小企業の8割以上が個人保証を求められています。
経営者保証に関するガイドライン策定の背景
中小企業・小規模事業者等の経営者による個人保証には、経営者への規律付けや信用補完として資金調達の円滑化に寄与する面がある一方、経営者による思い切った事業展開や、早期の事業再生等を阻害する要因となっているなど、保証契約時・履行時等において様々な課題が存在します。
これらの課題を解消し中小企業の活力を引き出すため、中小企業、経営者、金融機関共通の自主的なルールとして、平成26年2月1日より本ガイドラインが策定されました。2月以前も、経営者保証なしの融資を受けている企業や、保証を外すことに成功した企業はあったのですが、その基準が不明確だった為ガイドラインを策定し、その基準を明らかにすることとなりました。 経営者保証に関するガイドラインの概要
経営者保証に関するガイドラインは、経営者の個人保証について、
(1)法人と個人が明確に分離されている場合などに、経営者の個人保証を求めないこと。
(2)多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際に一定の生活費等(従来の自由財産99万円に加え、年齢等に応じて100万円~360万円)を残すことや、「華美でない」自宅に住み続けられることなどを検討すること。
(3)保証債務の履行時に返済しきれない債務残額は原則として免除すること。
などを定めることにより、経営者保証の弊害を解消し、経営者による思い切った事業展開や、早期事業再生等を支援することになります。
※第三者保証人についても、上記(2),(3)については経営者本人と同様の取扱となります。
※本制度には法的な拘束力はなく、条件に合えば経営者保証のない融資をするという自主的自立的な準則となり、銀行交渉は必須となります。
終わりに
本制度については、簡潔にまとめており、経営者保証に関するガイドラインの本文は日本商工会議所ホームページまたは全国銀行協会ホームページをご参照下さい。疑問・ご相談等ありましたら、お気軽にお問合せ下さい。