スキャナ保存制度の見直しについて

第119号

平成28年度の税制改正により、電子帳簿保存法におけるスキャナ保存の要件が改正されました。要件が緩和されたことで、領収書等の電子化に向けて環境が整いつつあります。
本改正のポイントについて解説します。

現行の電子帳簿保存制度の概要
現在、国税関係帳簿書類は紙による保存の他、国税関係帳簿(総勘定元帳等)は電子データ保存が、国税関係書類(領収書等)はスキャナ保存が一定の要件のもとに認められています。
スキャナ保存する場合のスキャナについては、保存する場所や保存する人(経理担当者等)が限定されており、保存後は、信頼のおける第三者機関であるタイムスタンプ局によって生成されるタイムスタンプを付すことが必要になっています。
そのうえで適正事務処理要件(相互けんせい、定期的な検査体制、再発防止策)も必要とされています。

平成28年度の改正の内容
今回の改正の内容は、スキャナの要件の緩和、緩和に伴う手続きの整備並びに適正事務処理要件の緩和です。

1 読み取りを行う装置に係る要件の緩和
 従来、スキャナについては「原稿台と一体となったもの」に限定されていましたが、この要件が廃止されスマホ等もスキャナとして取り扱われるようになりました。
 
2 受領者等が読み取りを行う場合の手続きの整備
 従来は、領収書を受け取った人は、領収書を持ち帰り、社内の経理担当者等が確認してから、領収書を電子化する必要がありました。
改正後は、スマホの写真機能を使って、いつでも、どこでも領収書を電子化できるようになります。経理担当者も画像を確認すればよいので経費精算がスムーズに。ただし、領収書を受領後、特に速やか(3日以内)にタイムスタンプを付与する必要があります。

3 小規模企業者に係る特例措置
 国税関係書類の保存義務者が小規模企業者(常時使用する従業員の数が20人、商業又はサービス業に属する事業を主たる事業として営む者については5人)以下の事 業者であって、定期的な検査を税務代理人が行うこととしているときは、相互けんせい要件が不要となりました。
従来は、国税関係書類のうち重要書類の作成又は受領からスキャナでの読み取りまでの各事務について、それぞれの者が行う体制が必要とされ、少なくとも3人(書類の受領者等、スキャナ保存者、検査者)が必要でした。  
改正後は、小規模企業者に該当する場合は、税務代理人である税理士等が定期検査をすることで、2人(書類の受領者等・スキャナ者、税務代理人)で足りることとなりました。

これらの改正により、受領した領収書を社外でスマホにより読み取ることができるようになりました。
適用時期
この改正は、平成28年9月30日以後にスキャナ保存の承認申請書を提出した場合から適用され、3か月前までに申請が必要となるため、最短で平成29年1月1日からスキャナ保存が可能となります。
過去にスキャナ保存制度の申請をしている場合も、平成28年度改正の要件でスキャナ保存を希望する場合は、再度申請が必要となりますので注意が必要です。                                                                        
終わりに
平成27年度税制改正で、スキャナ保存制度に大きな改正がありました。しかし、スキャナ保存にはスマホ等が認められなかったので、手軽にスキャナ保存制度を利用できる環境ではなく、IT業界での反応も少なかったのではないでしょうか。
今回の平成28年度改正により、スマホ等を使ったスキャナ保存が可能になりました。これに対応してIT業界でも、スキャナ保存した画像をクラウド上でタイムスタンプを付すようなサービスが提供されてきています。
是非この機会に領収書等の電子化を検討し、書類保管等のコスト削減、経費精算事務等の効率化を実現してみてはいかがでしょうか。
詳しくは弊所担当までお気軽にご相談下さい。

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