更正の請求の期間延長は、喜ばしいこと?

第103号

平成23年の税制改正で、更正の請求期間が延長となり、納税者の救済措置が拡大されました。今回は、更正の請求の内容とその影響について確認したいと思います。

 

更正の請求の期間延長は、喜ばしいこと?

1.更正の請求とは
そもそも更正の請求とはどのような手続きなのでしょうか。
既に提出した所得税や法人税、消費税等の申告書に計算誤り等があり税金を納めすぎていた場合に、その納めすぎていた税金を税務署に対して還付請求する手続き、これを「更正の請求」といいます。

2. 更正の請求をすることができる期間
更正の請求はいつでもできるというわけではありません。もともとは申告期限から「1年以内」に手続きをしなければならなかったのですが、今回の改正で申告期限から「5年以内」に延長となりました。
申告期限は、個人と法人で下記のように異なります。
個人の場合 → その年の翌年3月15日
ex 平成23年分所得税確定申告 → 申告期限 平成24年3月15日
更正の請求期限 従 来:平成25年3月15日まで
改正後:平成29年3月15日まで

法人の場合 → 事業年度終了の日から2月以内
ex 平成24年3月末決算法人  → 申告期限 平成24年5月31日
更正の請求期限 従 来:平成25年5月31日まで
改正後:平成29年5月31日まで

※注意点
この改正は、平成23年12月2日以降に申告期限が到来する申告から適用となります。
つまり、個人の場合には平成23年分以降の確定申告、法人の場合には平成23年10月末決算以降の申告から適用となります。

 

4.申告期限から1年を過ぎている場合には手続きができない?
平成23年12月1日以前の申告(個人の場合には平成22年分以前、法人の場合には平成23年9月期以前決算)の「更正の請求」の期限は、従前の「1年以内」となります。
しかし、平成23年12月1日以前に申告期限が到来する場合であっても、申告期限から1年を超え、かつ、3年以内であれば、新たに更正の請求と同様な手続きである「更正の申出」という制度ができました。これは法律ではありませんが、更正の申出書という書面を税務署に提出し、納めすぎの税金があると認められれば、納めすぎていた税金が還付されます。

5.修正申告
更正の請求期間が1年から5年に延長されたことは大変喜ばしいことですが、では、税金を少なく納めていた場合に正しい税金を納めるための手続きはどのようになっているのでしょうか。
正しい税金を納めるための手続きを「修正申告」といいます。「修正申告」は、修正申告書を税務署に提出して正しい税金と既に納めている税金の差額を追加で納税することになります。この修正申告書の提出期限が、法人と個人では異なります。
法人の場合、今回の改正による変更はなく、申告期限から「5年」となります。
個人の場合、改正前は申告期限から「3年以内」でしたが、改正後は申告期限から「5年以内」となりました。これは、更正の請求の期間と統一を図るため、期間が「5年」に延長されました。
この改正により、毎年確定申告している個人が税務調査等で申告内容に誤りが見つかった場合には、従来は最大で3年分を修正申告して追加納付すればよかったものが、今後は5年分修正申告して追加納付する可能性が出てきます。
※消費税については、法人個人にかかわらず従来は3年以内でしたが、5年以内に延長されました。

従来の還付の手続きは、申告後1年以内でないと手続きができませんでしたが、更正の請求が5年に延長されたことで、法人個人いずれも還付手続きがしやすくなりました。申告後に還付になりそうな事由がありましたら、是非一度ご相談下さい。

 

 

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