教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置について

第109号

平成25年度税制改正の目玉政策の一つである「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」が4月にスタートしました。信託銀行等が本制度対応商品を発売し始め、孫の教育費を支援したい祖父母から高い関心が寄せられています。

教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置について

教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置とは
平成25年4月1日から平成27年12月31日までの間に、30歳未満の方が直系尊属(祖父母など)から教育資金の一括贈与を受けた場合、1500万円までの金額について贈与税が非課税となります。
この贈与された資金(非課税拠出額)から教育資金の払い出しが行われることになりますが、30歳になった時点で教育資金として使われなかった残額に対しては贈与税が課税されます。
この非課税の適用を受けるためには、教育資金口座の開設等を行ったうえで、口座の開設等を行った金融機関を経由して「教育資金非課税申告書」を税務署に提出しなければなりません。

 

本制度の内容
(1)概要
受贈者(贈与を受ける者) 教育資金口座の開設等をした時点において30歳未満。
贈与者(贈与する者) 受贈者の直系尊属(祖父母、曾祖父母、父母、養父母など)。
叔父・叔母、配偶者の父母等は対象外。
非課税となる金額 何人から贈与を受けても、受贈者一人につき1500万円まで。(贈与者側は、贈与人数・贈与総額については制限なし。)
拠出方法 金融機関との教育資金管理契約に基づき、専用口座等に資金を拠出する。
拠出できる期間 平成25年4月1日から平成27年12月31日
申告 受贈者は金融機関を経由し「教育資金非課税申告書」を税務署へ提出。
払出の確認等 支出した教育資金の領収書等を金融機関に提出。
口座の終了 ① 受贈者が30歳に達したとき
② 受贈者が死亡したとき
③ 残高がゼロになったとき

従来制度との相違
従来より、教育資金については、扶養義務者間で、その都度、必要な範囲内でされた贈与には贈与税がかからないとされています。(費用の支払の都度、贈与を受けることが条件。)本制度において将来の教育費を非課税で一括贈与することが可能になりました。
また、従来からの暦年課税贈与、相続時精算課税制度との併用も認められています。

活用のポイント
(1)メリット
①使途の明確化
信託銀行等に資金を付託することから、子や孫が
教育費以外の浪費を防ぐことができます。
②相続税額の引き下げ
相続税の課税が想定される方は、相続財産を生前に確実に減少させることが可能となります。
③父母世代の相続課税の回避
祖父母から孫への贈与は、父母の世代の相続税
課税を結果として回避することになります。
(2)教育資金とは
原則は保育園と、学校教育法が定める幼稚園から大学までの学校に支払う費用が対象。また、塾や予備校、習い事の費用といった学校外の教育費についても、1500万円のうち500万円まで認められます。一方、書店で買った参考書、下宿代、受験の際にかかる宿泊費や交通費、留学渡航費などは、いずれも対象外となっています。

実際の手続き
国の制度がベースになっているため、本制度の対応商品は、概ね同じ仕組みとなっています。
(1)口座開設の手続き
金融機関との教育資金管理契約に基づき、孫などの名義口座等に、教育資金を一括して拠出。(複数回にわたる追加拠出も可能です。逆に中途解約はできません。)
同時に、受贈者は金融機関を経由し「教育資金非課税申告書」を税務署へ提出。
(2)口座からの払い出し
受贈者は、教育資金が必要になった時点で金融機関に払い戻し請求を行う。その際、使途が教育資金であるかどうかの判定のため領収書等を金融機関に提出。
(3)口座の終了
①残高がゼロになったとき
②受贈者が30歳に達した時
前述通り残額がある場合、その年の贈与として申告、納税が必要。
③受贈者が死亡した時
残額があっても贈与税は課税されない。
※金融機関には、受贈者の所轄税務署に対し
「教育資金管理契約の終了に関する調書」の提出が
義務付けられています。

 

(2)デメリット
①信託手数料等が発生することがあります。
②証憑書類の保存義務
金融機関に証憑書類等を提出し、記録等を保持してもらう煩雑さがあります。

終わりに
本制度を利用することで、一定の条件下では相続税対策として有効です。しかしながら必要以上の拠出は新たな問題を生むことも考えられます。拠出額を使いきろうとするあまり、必要性のないスクールへ通わせるようなことは避けたいものです。制度の活用にあたりましては、様々な角度から十分にご検討ください。
専門家にアドバイスを求めることもお勧めいたします。

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