ゴルフ会員権の譲渡損失の損益通算廃止

第113号

平成26年税制改正大綱の内容が今国会へ提出されたことにより、ゴルフ会員権の譲渡損失の損益通算が平成26年4月1日の譲渡から廃止されることが見込まれています。今回はゴルフ会員権の売却について解説します。

ゴルフ会員権の譲渡損失の損益通算廃止

現在までの流れ
ゴルフ会員権の損益通算廃止論は今までに幾度となく浮上しています。平成16年2月に、財務省より「個人が保有するゴルフ場やリゾートマンションの会員権を”投資対象のぜいたく品”と見なし、売却時に生じた譲渡損失を他の所得と相殺(損益通算)できないよう所得税法などを改正する」と方針を固めて以降、毎年のように議論されては改正されず、を繰り返していました。
しかし平成26年度税制改正大綱の内容が今国会へ提出されたことにより、ゴルフ会員権の譲渡損失の損益通算は平成26年4月1日の譲渡より廃止されることがほぼ決定事項となりました。
現在の課税について
ゴルフ会員権は、特定の会社の株主にならなければ会員となれない会員権とその他の会員権とに区分されますが、個人であればこれらの会員権を売ったときの所得はいずれも譲渡所得として事業所得や給与所得などの所得と合わせて総合課税となります。計算方法は以下の通りで、こちらは税制改正後も継続されます。
① 所有期間が5年以内のもの(短期譲渡所得)
収入金額 - (取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額 50万円 = 課税される金額
② 所有期間が5年を超えるもの(長期譲渡所得)
{ 収入金額 - (取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額 50万円 } × 1/2 = 課税される金額
この、「収入金額 - (取得費 + 譲渡費用)」がマイナスの場合は、特別控除は使えませんが、譲渡損失として事業所得や給与所得など他の所得と相殺し、所得税や住民税を減額出来るのが現在の譲渡損失の損益通算です。
注意事項
ゴルフ場経営法人が破産した場合など譲渡損失を損益通算出来ない場合があります。また、ゴルフ会員権の譲渡が営利を目的として継続的に行われている場合には、その実態に応じて事業所得又は雑所得となります。
事例
課税所得700万円で他に所得がない会社員を挙げますと、以下のようになります。
・所得税(復興特別所得税含む)と住民税合算金額
700万円 × 33.21%( 所得税率 + 住民税率 ) - 649,356円 = 1,675,300円(①)
・会員権を売却して500万円の譲渡損失が出た場合
( 700万円 - 500万円 ) × 20.21%( 所得税率 + 住民税率 ) - 99,548円 = 304,600円(②)
1,675,300円(①)-304,600円(②)= 1,370,700円税金が安くなります。
仮に譲渡損失が課税所得を超える場合は、課税所得が0円となり、翌年以降への繰越は出来ません。ただし、個人事業主の場合で青色申告者であれば、控除しきれない損失を、翌年以後3年間事業所得から控除をすることが出来ます。
終わりに
ゴルフ会員権の譲渡損失の損益通算が平成26年4月1日から廃止になれば、今までのように売却する理由が無くなる為、会員権相場は上がり、売り手市場になるという意見もあります。その時に売却する方が、金銭的にはメリットが生まれる可能性もあります。いずれにせよ、譲渡損失を損益通算出来る期間は残り2ヶ月程度と見込まれます。ゴルフ会員権をお持ちの方は、注意事項の内容のご確認等を含め、お早めのご判断をお勧めします。

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