先日、マニー・パッキャオの7ヶ月ぶりとなる復帰戦が行われました。王者ジェシー・バルガスから2Rにダウンを奪い判定勝利をおさめ世界王者に返り咲きました。
 パッキャオは、フィリピン出身の6階級制覇王者で、デビューしたライトフライ級から、6階級制覇を成し遂げたスーパーウェルター級まで11階級も上げてきた異色のボクサーです。世界中のボクシングファンが「絶対に勝てない」と感じたマッチメイクにも真っ向から立ち向かい、ラホーヤやミゲール・コットなど各階級の最強王者を次々とKOで倒し偉業をなしとけました。自分より一回りもふた回りも大きなボクサーを相手にエキサイティングなファイトを連発し、スターダムへの道を駆けあがってきました。
 パッキャオの人気の理由はその強さや、超攻撃的スタイルもさることながら、そのバックグランドも大きく影響しています。フィリピンのミンダナオ島の貧困層出身で、成功を収めたあとも地元に住み続け、様々な形でファイトマネーを祖国に還元してきました。金銭的支援にとどまらず国会議員にも立候補、政治家として貧困と立ち向かっています。
 パッキャオはフィリピンの人たちにとって希望の星であり夢でもあったのです。パッキャオが試合をする日はフィリピン南部の紛争すら休戦になるそうです。最初の選挙での落選は、当選するとパッキャオの試合が見れなくなると心配されたからだとも言われています。
 2012年、因縁のライバルのマルケスから壮絶な失神KOによる負けを喫しました。失意の中、帰国した際には、試合直前に未曾有の台風による深刻な状況でありながら、沿道で20万人を超す人々が出迎え口々に感謝の言葉を投げかけたそうです。「自分が国を背負っていると思っていたけど、実は支えられていたんだ。」と気付き再び立ち上がります。
 その後一度負けたブラッドリー戦や世紀の一戦とも言われたメイウェザー戦を経て引退を表明しましたが、今回復帰をはたし、再び雄姿を見せてくれました。
 命を削りながらも不屈の精神でリングに立ち続ける雄姿を目に焼き付けたいと思います。